ふたりだけの時間
正門から玄関を結ぶ長いスロープは「おはようさかみち」と名付けられました。長時間保育が常態化し、休日保育まで求められるいま、親子が一緒に過ごす時間は思いのほか少ないのではないでしょうか。自転車を降りてからバイバイするまでのわずかな間でも、さかみちを連れ立って歩きながら、ふたりだけの時間を大切に感じてほしいという思いを、このスロープに託しました。
その上部には、正門前から玄関まで屋根を連続して設け、荷物を抱えてこどもの手を引く保護者が、雨天時でも登降園しやすいようにしています。
レベル差のある敷地の特性を活かし、1階床レベルを「だいちのひろば(乳児園庭)」より低い位置に設定し、保育室からこどもの目線で外をのぞけば、地面を彩る草花が間近に見えるようにしたり、「はらぺこほーる」から2階へ至る階段下の床を掘り込んで「あなぐら」にするなど、こどもたちの目線の上下変化を誘う空間構成としました。
「あおぞらひろば(3階屋上)」からは、巨峰が豊かに実る「ぶどうのひろば(2階屋上)」と、「だいちのひろば(1階園庭)」を見下ろせるようにし、上下階の連続性を高めています。
外観は、本園の母体である神戸松蔭女子学院大学の学舎の特徴を踏襲するとともに、阪神間の景観を形成する御影石を使いました。神戸松蔭の品格を継承しながらも、地域の文脈を取り込んだデザインとしたことは、住民の皆様と共に保育を展開していこうとする園の思いと符合するものとなりました。