夢を摘み取れば
当初提案の床面積は、実は倍近くありました。
圧倒的な予算超過からスタートした設計は、めぐみ幼稚園の夢をひとつずつ摘み取っていく作業に他なりませんでした。
本当に納まるのかという不安の中の辛い作業でしたが、無駄を削ぎ落とすごとに引き締まり、かえって本当に必要なものがはっきり見える明快なプランとなりました。
広いデッキと丸太柱、小さなかくれが、そして天上からの光が降り注ぐいのりのおへや。
元気な時、沈んだ時、皆といたい時、ひとりになりたい時、感情を制御することを覚えていく子どもたちに、時々の気持ちによって居場所を選択できる様々な性格の空間を提供します。
めぐみの保育の新しい舞台が建ちあがりました。
工事中も成長中の子どもたちへ
園舎の建替え工事は、子どもたちに仮園舎での長い生活を強いることになります。
時間もコストも抑えられた中、北梅組の業務の枠を超えた粋な計らいで、解体する旧園舎でのおわかれ落書き会、工事現場のぞき窓、仮囲いでお絵かき作品展、重機の運転実演、工事現場の探検などが実施
されました。
常に子どもたちを見つめながら現場を運営する北梅組の温かい思想に触れ、私はとてもうれしかったです。
工事中の窮屈なくらしが、少し和らいだのではないかと思います。
30本の丸太、30通りの姿
赤いもの、白いもの、あばたのあるもの、日焼けしたもの、つるつるのもの、ぼこぼこのもの。
均質化の時代を生きる子どもたちに、ONLY ONEになれと歌い聞かせるのなら、違いこそが本物の証だということを、私たち大人は彼らに伝えなければいけません。
京都北山から切り出された様々な表情をもつ丸太群は、違うことの美しさを子どもたちに黙したまま語りかけます。
目で見、肌で感じ、ここに暮らす子どもたちが違いを認められる大人に育っていく、その一助になればとてもうれしいです。